初めて見る特殊キルト 2020/7

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摩訶不思議な立体キルト

先日、東京のお客さまからご依頼をいただいた西川(西川産業)の羽毛布団です。今まで3000枚以上のリフォームを行ってきましたが、非常に珍しいキルティング構造をしていましたので、備忘録として上げることにしました。

百貨店でご購入なさったそうで、中身はダウン率95%のマザーグースダウン表示で充てん量は1200gです。非常にゴミの少ない羽毛です。

普通は立体キルトか二層キルトがほとんど

通常一般的な立体キルトは下図のように、縦にマチが入っていて、厚みをできるだけ均一にするように作られています。しかし、マチのある縫い目部分はどうしても薄くならざるをえません。特に縫い目が十字に重なるところは羽毛が薄くなります。

その欠点を克服し、保温力を向上させるために作られたのが二層構造のキルティングです。下図のように、表地と裏地の間に生地を挟むことで、厚みを均一にしています。多くのメーカーの高級品タイプがこの二層構造(あるいは3層構造)になっています。保温力を上げることが求められた時代の名残といえるでしょう。

しかし、中間の生地はあまり通気性が良いとはいえないナイロンタフタが使われることがほとんどで、保温力が増す一方で、通気性が落ちて蒸れやすい羽毛布団になります。住いが高気密・高断熱化する中では、役割を終えているといえます。

摩訶不思議な複雑キルティング

今回の羽毛布団は今まで見たことのないキルティングです。

キルティングのマス目を見ると、表は5×9ですが均等ではありません。裏面をみると一般的な3×5キルトです。しかし中の構造は二層式ではありません。

断面図はこのようになります。つまり、中を仕切るマチが斜めになっているわけです。これだけなら判りますが、実は縦方向も横方向も同じような断面構造になっているのです。つまり、三角形の部分が縦横重なる場所は逆ピラミッドのようになっています。

狙いは良くわかるけど、あまりに複雑

あまりに複雑なので、羽毛布団を解体していて最初は戸惑いました。確かにこのようなキルティングによって均一の羽毛布団を作ろうとした意図は良くわかります。なるほどなぁ~と感心しながら解体していました。

ところがあまりに複雑だったためか、三角形の部分で充填忘れが2箇所ほど見つかりました。充填忘れでもそれほど影響のない部分ですが、自分自身で充填することを考えると御免被りたいキルティングです。

このように、羽毛布団のキルティングは実にいろいろなパターンが研究され、このように実用化されてきましたが、結局残っていきませんでした。それでもよくこのような縫製をしたものだと感心します。

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