ダウナ(Dauna)羽毛布団を評価する

ダウナ(Dauna)羽毛布団をリフォームして感じること

大塚家具さんの羽毛布団ダウナ(Dauna)のリフォームを数多くいただいています。今回も掛・肌布団入れて6枚のリフォームをご用命いただきました。いずれも(推定で)2008~2013年に製造されたものと思われます。ご使用10~10数年ですので、羽毛布団そのものの汚れはあまりなく、比較的良い状態でした。その為、順調にリフォームにすることができました。

これが使用歴15年を超えると、生地も羽毛も厳しくなります。ダウナはドイツ製の生地を使っているために軽くて通気性が良いのですが、その反面、羽毛が汚れやすくなります。そうすると羽毛の損傷やコロコロに丸くなって回復しないダウンが増えるのです。今回は10年程度ですが、それでも汚れが少ないものと、そうでないものには違いがありますし、いままでの経験も踏まえて、ダウナ羽毛布団を評価してみたいと思います。

ダウナ羽毛布団で使われる羽毛について

ポーランドの北西部ポメラニア地方のマザーグースといわれています。品質表示ラベルにもマザーグースと表記されています。ポメラニアは東部のマズーリア地方と合わせて、良い羽毛が採れる産地です。私どももKauffmann社のポメラニアのステッキーグースを長年扱っておりました。

「ダウン95%」はちょっと無理がある

かつて機械選別で、ダウン率をネット(正味)で95%出すのは難しいといわれていました。現在では選別器の性能が上がり、ダックダウンであっても93%表示をするものが増えています。

ダウナのグースは、ぱっと見てもスモールフェザーがあちこちに散見されます。河田フェザーだとダウン95%の羽毛は、一見ほとんどがダウンボールばかりで、よくよく見ないとスモールフェザーが見つかりません。ダウン率の測定はIDFLの評価機関で行なわれていますので、正式にはそれにお任せするとして、9000枚以上羽毛布団を作ってきた経験からすると「良いところダウン93%」と評価します。

ドイツでは、「ダウン100%」の表示が許されていますが、日本の基準に直すと90%程度というようにダウン率表示が少し甘いのです。ダウナはドイツで作られているので、製造工場ではそこまで厳しくコントロールなされていないのかもしれません。ダウンパワーはマザーグースであれば少なくとも430dp以上はあるはずですが、これは概ね近そうです。

もっとも、ダウン率の表記で差が出るのかというと、そうではありません。品質基準の目安のようなものでしょう。しっかりしていればダウン90%表記でも、良い羽毛がかつてはありました。最近は400dp以上だとダウン率93%表示が当たり前になっています。

充填量が不安定

今回はシングルで羽毛の充填量が1050g入のものが3枚ありました。リフォームの際は解体前の総重量と、解体後の側重量を量って羽毛の正味重量をチェックしています。

1枚目(2018製?)  総重量1776g-解体後側重量704g=羽毛量 1072g
2枚目(2012製?)  総重量1876g-解体後側重量766g=羽毛量 1110g
3枚目(2013製?)  総重量1734g-解体後側重量744g=羽毛量 990g

上と下で120gの差があります。実際解体前でも明らかにふっくら感が異なりました。側重量は、羽毛が付着していることもあるので、ばらつきがでますがそれでも1枚目は軽いです。おそらく製造年が5年違うので、生地の仕様が変わったのかもしれません。ちなみに生地重量が85g/㎡と同じスペックの当社のS9100側生地は750gぐらいです。

ダウナ羽毛布団に使われる側生地について

側生地メーカーはSandersらしいので、生地重量と打ち込み本数から、PBという品番がそれに相当するのではないかと推測しています。ダウナの側重量はリフォームするごとに異なるので不思議に思っていましたが、どうやら、製造年によって差がでるようです。

これも推測ですが、ダウナは羽毛の吹き出しが目立ったこともあり、仕上げ時のダウンプルーフ(吹き止め加工)の仕様を途中で変えたのかもしれません。以前に別のお客様でお預かりしたダウナはウェットもドライもクリーニングできない表示になっていて、「いったいどうするの?」と思ったことがあります。

ダウナ羽毛布団の生地は通気性が良いために、定期的な丸洗いなどをさぼると、ダウンに汚れが付き、ダウンの損傷も増えて嵩が減ってしまいます。

側生地の縫製と、羽毛充てん量のバランスが良くない

シングルサイズのダウナ羽毛布団は4×5マスキルトですが、マチが11cmあります。以前に800g入り(上の画像)をリフォームした時に整理をしてみました。

片寄りやすい800g入りのダウナ羽毛布団のリフォーム
羽毛布団の羽毛の量が800g前後のダウナ羽毛布団は、オリジナルの4×5 20マスキルトの側生地だとマス目で羽毛の片寄りが出やすくなります。これを避けるためには、5×6 30マスの中厚仕上げにした方がベストです。実際にS9100生地5×6 850gにしてリフォームしてみました。

1050g入りの場合は、新品の状態ならある程度ふっくらしますが、長年使って嵩が減ってくるとマス目の偏りがはっきりと判るようになります。過去15年以上使用されてきたダウナ羽毛布団は多くの場合、羽毛がかなりへたり、マスで偏りがでるのです。

24年間ご使用のダウナ(DAUNA)羽毛布団は甦るのか?
24年ご使用のダウナ羽毛布団のリフォームができるのか、というご相談です。実際に羽毛を見せていただくと、生地に汚れや破れがあり、中の羽毛も損傷がそこそこあって、なかなか厳しい状況です。ただ、丁寧に2度洗いをして、足し羽毛を増量することにより、10数年は使える羽毛布団に甦りました

私見ですが、シングルで4×5マスキルトにするのであれば、マチは7cmぐらいにしておいた方がいいでしょう。ベストは私どもで採用している変形5×5キルトです。

今回肌ふとんも同じ4×5マスでしたが、マチは4cmで400g入りでした。この場合も偏りが出やすいので5×6マスで直キルトか2cmマチぐらいの立体キルトがベストでしょう。

本当は中厚を中心にラインアップすべきだったのでは?

羽毛布団の歴史は、使う人に快適であるかどうかは別にして、売りやすいということに主眼が置かれてきました。その結果、「ふっくら嵩高の羽毛布団」が出回ったのです。販売する際に、部屋の断熱性や、使う人の体質に合わせて提案するということは全く考えられておらず、業界では「奥さん、この羽毛布団はふっくらしていて高級なんですよ」というリクツがまかり通っていたのです。

今日のように、気密性や断熱性が高い住宅が増えると、特に都市部においては、普通厚の羽毛布団は暑すぎるのです。ダウナの羽毛の生地のレベルから考えると、5×6マス 5~7cmマチ 充てん量は800~900gぐらいの中厚仕立てにするのが、一番使いやすいと思われます。

かつての大塚家具さんのような客層から考えると、そうすべきとお節介にも思えるのです。

 

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