大塚家具のダウナ(Dauna)羽毛布団を評価してみた

2014年製で9年ご使用のダウナ羽毛布団。生地もダウンボールもしっかりしている
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ダウナ(Dauna)羽毛布団をリフォームして感じること

大塚家具さんの羽毛布団ダウナ(Dauna)のリフォームを数多くいただいています。ただ、ご使用状況やご使用年数によって羽毛の状態が著しく異なります。

そこでダウナ羽毛布団をプロの目から評価してみたいと思います。

使用10年までのダウナ羽毛布団は比較的状態が良いものが多い

上の画像は2014年製のダウナ羽毛布団で、ご使用歴9年のダウナ羽毛布団です。側生地もきれいにご使用になっており、羽毛もダウンボールがしっかりしていて、何ら問題なくリフォームすることができました。

800g表示でしたが、実際には830g、羽毛を洗浄除塵した後も730gとしっかり残りました。

使用15年を超えると、羽毛の損傷や汚れが増える

16年ご使用のダウナ羽毛布団 ダウンボールのふっくら感はあるが、球状に固まったものが多い

これが使用歴15年を超えると、生地も羽毛も厳しくなります。

ダウナはドイツ製の生地を使っているために軽くて通気性が良いのですが、その反面、羽毛が汚れやすくなります。そうすると羽毛の損傷やコロコロに丸くなって回復しないダウンが増えるのです。

上の16年ご使用の場合1050gは洗浄除塵後で850gに減りました、下の24年ご使用のは1050gが700gまで減っています。減りが多い原因は、球状に固まってしまったダウンが多いことと、ダウンが総称してダウンファイバーになり、ゴミとして取り除かれた分です。

24年ご使用のダウナ羽毛 かなり損傷が多い。洗浄後は700gと最初の2/3に減ってしまっている。

ダウナ羽毛布団で使われる羽毛について

ポーランドの北西部ポメラニア地方のマザーグースといわれています。

品質表示ラベルにもマザーグースと表記されています。ポメラニアは東部のマズーリア地方と合わせて、良い羽毛が採れる産地です。私どももKauffmann社のポメラニアのステッキーグースを長年扱っておりました。

「ダウン95%」はちょっと無理がある 93%表示ぐらいが妥当

かつて機械選別で、ダウン率をネット(正味)で95%出すのは難しいといわれていました。現在では羽毛選別機の性能が上がり、ダックダウンであっても93%表示をするものが増えています。

しかしながら、ダウナのグースダウンは、ぱっと見てもスモールフェザーがあちこちに散見されます。河田フェザーさんのダウン95%の羽毛の場合は、一見ほとんどがダウンボールばかりで、よくよく見ないとスモールフェザーが見つかりません。

ダウン率の測定はIDFL等の評価機関で行なわれていますので、正式にはそれにお任せするとして、9000枚以上羽毛布団を作ってきた経験からすると「良いところダウン93%ぐらいが妥当ではないか」と評価します。

ドイツでは、「ダウン100%」の表示が許されていますが、日本の基準に直すと90%程度というようにダウン率表示が少し甘いのです。ダウナはドイツで作られているので、製造工場ではそこまで厳しくコントロールなされていないのかもしれません。

ダウンパワーはマザーグースであれば少なくとも430dp以上はあるはずですが、これは概ね近そうです。

日本でもかつてダウン率が95%と表示されている羽毛布団が少なからず出回っていました。今のようにネット表示(正味表示)でなく5%の猶予があったためで、ネットで90%ぐらいしかなくても、95%表示することが多かったのです。

もっとも、ダウン率の表記90%、93%、95%で差が出るのかというと、決してそうではありません。品質基準の目安のようなものでしょう。しっかりしていればダウン90%表記でも、良い羽毛があります。ただ、最近は400dp以上だとダウン率93%表示が当たり前になっています。

気になるダウンファイバー(羽毛ゴミ)の多さ

いわゆるマザーグースクラスの羽毛布団をリフォームする中で、ダウナで一番気になるのはダウンファイバーと呼ばれる羽毛ゴミが多いことです。15年以上ご使用のダウナに顕著です。

通常解体して羽毛を取り出すと、良い羽毛を使ったものは、解体した側生地の内側に残ることは少ないのですが、ダウナは結構残ります。

18年使用したダウナ羽毛布団解体後の生地に残るダウンファイバー(羽毛ゴミ)

新品同様のダウナをリフォームした際には、少し多めかなというぐらいですが、15年以上使用したダウナは明らかにダウンファイバーの多さを感じます。

これは、長年の使用でダウンが壊れていって、ダウンファイバーになっていったと考えられます。15~20年前にハンドピック表示の上質なグースの場合はここまで起きません。原因としては、いろいろ考えられるのですが、私としては羽毛自体の品質に疑問を持っています。

この画像の中央左はダウンボールが大きく、ダウンの中央部が密集していますが、右側はダウンボールも小さく、密集度具合も良くありません。密集度が高いダウンは使用していても壊れることが少ないので、使用していてもダウンファイバーになることは少ないのです。一方、未成熟なダウンは、中央部のダウンのつながりが弱く、使用しているうちに壊れてダウンファイバーになります。

低品質な羽毛をリフォームすると、想像以上に減ってしまうのは、羽毛が壊れてゴミがふえたためです。これは致し方ありません。

実際私どもで製作した440dpクラスの羽毛布団のリフォームを行ってみても、羽毛ゴミは非常に少ないのです。ダウナのダウンの壊れ方を見ると、正直本当にマザーホワイトグースなの?大丈夫なの?と心配になります。

羽毛がコロコロに固まって、洗っても羽毛が開かない

15年以上使用なさっていたダウナに顕著なのが、元々しっかりした羽毛だったのに、汚れがついたのかコロコロに固まってしまって、羽毛が開かないという点です。

羽毛リフレッシュマシンの分別機に取り残された、固まってしまったダウン
このように何回洗っても、球状に固まって羽毛が開かない

この画像は、18年ご使用でダウナ羽毛布団です。解体時にダウンがコロコロ球状に固まっていたために、通常1回行う洗浄工程を2回にして、乾燥の後、分別機に残った羽毛です。球状に固まっていて羽毛が開きません。この状態のダウンは、重量になりますが嵩にならないので分別工程で取り除きます。

原因は、羽毛布団側の通気性が良すぎて(吹き出しの原因にもなりますが)通常よりダウンの汚れが強くこびりついてしまっていることが大きな要因かと思われます。

この現象は、通気性の高い生地には起こりやすいため、私どもでも長年手入れがなされていない羽毛布団に散見されます。これを防ぐには定期的な丸洗いが有効ですが、ダウナはドライクリーニングも水洗いも禁止されているという、クリーニング店泣かせな洗濯表示になっています。

本来は水洗いするのがベストなんですが、さらに生地の通気度が上がってしまい、結果羽毛の吹き出しが増えるという悪循環になります。こうなるとリフォームしか対応策がありません。

羽毛の充填量が不安定

あるお客様からダウナを3枚お預かりしました。いずれもシングルサイズで羽毛の充填量が1050g入です。私どもではリフォームの際は解体前の総重量と、解体後の側重量を量って羽毛の正味重量をチェックしています。

1枚目(2018製?)  総重量1776g-解体後側重量704g=羽毛量 1072g
2枚目(2012製?)  総重量1876g-解体後側重量766g=羽毛量 1110g
3枚目(2013製?)  総重量1734g-解体後側重量744g=羽毛量 990g

上と下で120gの差があります。実際解体前でも明らかにふっくら感が異なりました。側重量は、羽毛が付着していることもあるので、ばらつきがでますがそれでも1枚目は軽いです。おそらく製造年が5年違うので、生地の仕様が変わったのかもしれません。ちなみに生地重量が85g/㎡と同じスペックの当社のS9100側生地は750gぐらいです。

ダウナ羽毛布団に使われる側生地について

側生地メーカーはドイツのSanders社らしいので、生地重量と打ち込み本数から、PBという品番がそれに相当するのではないかと推測しています。

ダウナの側重量は結構ばらつきが大きいので不思議に思っていましたが、どうやら、製造年によって差がでるようです。これも推測ですが、ダウナは羽毛の吹き出しが目立ったこともあり、仕上げ時のダウンプルーフ(吹き止め加工)の仕様を途中で変えたのかもしれません。

側生地から羽毛の吹き出しが多い

ダウナ羽毛布団のトラブルで多いのが羽毛の吹き出しです。大塚家具のサイトにも吹き出しやすいと記載されています。

同クラスのSB100生地の打込みが350本(1インチ四方の経糸・緯糸の本数 この場合180/170で350本)であるのに対し、ダウナの生地は295本しかありません。打ち込みがあれば必ずしも良い、とは限りませんが、ダウナは生地の打込み本数が甘いのが、羽毛の吹き出しが多い原因の一つと思われます。

そもそも、ダウンファイバーの少ない良質の羽毛であれば、吹き出しは気になるほど出ることは稀です。

一般に縫い目から吹き出すことはありますが、ダウナはインターシームといわれる縫製なので縫い目からの吹き出しはほとんどないのです。ダウナの羽毛にダウンファイバーが多いというのが、吹き出しの理由のもう一つでしょう。

洗濯はどうするの?

あるお客様でお預かりしたダウナ羽毛布団です。選択方法の表示をみるとウェットはダメ、ドライですらダメとクリーニングできない表示になっていて、「いったいどうするの?」と思ったことがあります。

「洗濯はクリーニング店にご相談下さい」といわれても、「この表示では、クリーニングはお受けできません」といわれるのが通常でしょう。今でもそうなっているのでしょうか?

ダウナ羽毛布団の生地は通気性が良いために、定期的な丸洗いなどをさぼると、ダウンに汚れが付き、ダウンの損傷も増えて嵩が減ってしまいます。

一方で丸洗いするごとに通気性が上がって、ダウンファイバーが吹き出しやすくなりますので、非常に微妙な羽毛布団ですね。

側生地の縫製と、羽毛充てん量のバランスが悪く片寄りやすい

シングルサイズのダウナ羽毛布団は4×5マスキルトですが、マチが11cmあります。ところがマチが11㎝もあると、羽毛の片寄りがかなりでます。

以前に800g入り(上の画像)をリフォームした時が顕著でした。側の体積に対し羽毛の量が足らないのです。

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なぜそうなるのかを整理してみました。

元々羽毛の量が足らないため、羽毛がへたると片寄りが顕著になる

1050g入りの場合は、新品の状態ならある程度ふっくらしますが、長年使って嵩が減ってくるとマス目の片寄りがはっきりと判るようになります。過去15年以上使用されてきたダウナ羽毛布団は多くの場合、羽毛がかなりへたってしまい、マスの場所によっては羽毛がないぐらいに片寄ります。

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私見ですが、シングルで4×5マスキルトにするのであれば、マチは7cmぐらいにしておいた方がいいでしょう。ベストは私どもで採用している変形5×5キルトです。

今回肌ふとんも同じ4×5マスでしたが、マチは4cmで400g入りでした。この場合も偏りが出やすいので5×6マスで直キルトか2cmマチぐらいの立体キルトがベストでしょう。

本当は中厚を中心にラインアップすべきだったのでは?

羽毛布団の歴史は、使う人に快適であるかどうかは別にして、売りやすいということに主眼が置かれてきました。その結果、「ふっくら嵩高の羽毛布団」が出回ったのです。販売する際に、部屋の断熱性や、使う人の体質に合わせて提案するということは全く考えられておらず、業界では「奥さん、この羽毛布団はふっくらしていて高級なんですよ」というリクツがまかり通っていたのです。

今日のように、気密性や断熱性が高い住宅が増えると、特に都市部においては、普通厚の羽毛布団は暑すぎるのです。ダウナの羽毛の生地のレベルから考えると、5×6マス 5~7cmマチ 充てん量は800~900gぐらいの中厚仕立てにするのが、一番使いやすいと思われます。

かつての大塚家具さんのような客層から考えると、そうすべきとお節介にも思えるのです。

ダウナ羽毛布団のメンテナンスについて

丸洗いはできるだけ避け、カバーをこまめに替え、天日干しをする

ダウナの側生地は通気度が高いために、そのままでも側生地から羽毛が吹き出すことがあります。水洗いをすることはできますが、ダウンプルーフ加工が取れて、さらに通気度が上がって羽毛が吹き出しやすくなります。

これを避けるには、こまめにカバーを替えることと、時々太陽光に当てて、側生地を乾かすことが大切です。外に日干ししなくても、室内で太陽光を当てるだけでも良いと思います。使用年数の長いダウナは側の汚れが大きいため、羽毛の損傷も増えますので、留意ください。

リフォームは10年ごとがベスト、12年がぎりぎりか?

今まで100枚以上ダウナのリフォーム仕立てを行った現場からいいますと、10~12年でリフォームするのがベストです。10年未満でも側の汚れが強い場合は早めのリフォームがいいでしょう。

年数が経つにつれ、羽毛の損傷が増えて、リフォームした時の羽毛が多く失われます。

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