ヴィンテージ羽毛布団リフォームシリーズ。今回は31年前の自家製のハンガリーグース羽毛布団です。
31年前に私がお仕立てした羽毛布団のリフォーム
長年ご愛顧いただいている長浜市内のO様より羽毛布団リフォームのご用命です。品質表示ラベルに12-Oct-1991と製造日の記述が手書きであります。1991年10月12日、製造台帳を確認したところ製造番号は587でした。2022年9月現在で6200枚近くですから、初期のころにお仕立てお買上いただいた羽毛布団です。お仕立てしたのは店主の私。実に31年経っています。
襟元の汚れ等をみると、年数は経ってはいるものの、比較的きれいにお使いの羽毛布団で、羽毛の弾力性も損なわれていません。側は今から見るとお恥ずかしいような、40番手230本打ち込みの平織で4×5立体キルトです。当時側や羽毛を購入していたシャルマン武井商事の側です。
31年経っても羽毛がしっかりしたまま
女性の方がお使いいただいていたということ、カバーの交換などこまめにメンテナンスされていたためと思われますが、側生地が比較的にきれいです。
羽毛はハンガリー産のハンドピック(手摘み)のホワイトグースで、ダウン率は90%。当時の嵩高で16.5㎝、現在なら400dpのロイヤルゴールドラベルクラスの羽毛です。ダウンボールがしっかりしていてパワーがあります。
当時は、手作り羽毛を手掛けていましたが、まだまだその数は少なく、通常は既製品の羽毛布団をメーカーから仕入れて販売していました。もし、その当時のメーカー既製品であれば31年経った羽毛は、「お買い換えですね」というケースがほとんどです。
スモールフェザーの違いで、元の羽毛の良さが判る
羽毛布団の表示は、ダウン90%スモールフェザー10%というように、ダウンとスモールフェザーの混率で表されます。一般的にはダウンの割合が高いほど高品質です。ところが、現実はダウン率だけで判断するのはとても危険です。
スモールフェザー(小羽根)は通常6.5㎝未満の羽根をいいます。上の画像でいうと、両方共がスモールフェザーです。しかしながら、多くの羽毛布団には右側の小さなスモールフェザーが非常に多いのです。このスモールフェザーはネックフェザーと呼ばれ、主に首の周りの部分です。これが多いと生地を突き破ったり、そこまでいかなくても、リフォームの際には生地へばりついていることが多く、良い羽毛には少ないのです。
経験的に左側のような大きなスモールフェザーが入っている羽毛は、成熟した良い羽毛であることが多いのです。通常、羽毛の選別工程でスモールフェザーの多くは取り除かれるのですが、10%含まれるスモールフェザーの状態を見ても、この羽毛が非常にしっかりしていることがわかります。
SB8080軽量生地に1200g入で仕立てました
元の羽毛は1300g入でした。通常は同じ量になるように足し羽毛をしますが、洗浄したあともしっかりした羽毛でしたので、足し羽毛を量を減らす代わりに、質の良いホワイトグースダウンに変更して1200gで仕上げました。生地が軽いということもありますが、元々の羽毛の性が良かったのか、1200gで十分ふっくらと仕上がりました。1300g入れていたら、かえってフィット感を損ねてしまいます。1200gがベストでした。
今回、31年前の羽毛布団が、非常にいい状態でリフォームできた原因は
- 羽毛布団の汚れが少なく、丁寧に取り扱われていたこと
- 当時では良いハンガリー産のハンドピックグースであったこと
大きくこの2つです。羽毛は嘘つかないのです。