羽毛布団の二層式キルティングの問題点と解決法

このように理想的な羽毛布団と説明されている二層式キルティング
目次

羽毛布団において二層式キルティングが生まれた背景

今から40~50年ぐらい前、まだ羽毛布団の普及率も低かった頃の羽毛布団のキルティングは、額キルト+直キルトでした。当時は裏地が表側に返る鏡仕立てという木綿わたの布団が主流だったので、羽毛布団もそれに似せたキルティングでした。

まだ立体キルトは一部でしかなく、羽毛の規格も現在に比べると、信じられないぐらいに甘い基準でした。当時のダウン70%の羽毛は現在ならダウン40~50%ぐらいにしかなりません。

立体キルト加工の誕生-4×5キルトが主流に

1980年頃より立体キルトが生まれました。この時には3×4キルトなどもありましたが、ほとんどが4×5キルトで、これが今日でも主流になっています。

4×5立体キルト

当時は立体キルトのマチ(高さ)も少なかったことがあるのですが、4×5キルティングは2つの問題を抱えていました。

一つは体の中央に縫い目が来るのでその部分が薄く、熱が逃げやすいために保温力に難点があったこと、もう一つは保温力を上げようと羽毛の量を増やすと、各マスのふくらみが出すぎて、身体へのフィット感がなくなることでした。3×4キルトだと、中央部に縫い目が来ることはありませんが、一マスが大きくなって、偏りがでるのが問題でした。

二層式キルティング 3×4-4×5の誕生

この4×5キルトの欠点を改善して、より保温力の高い羽毛布団を生み出すために生まれたのが二層式キルティングです。表生地と裏生地の間にもう一枚生地を入れ、上面が3×4マスで下面が4×5マスのそれぞれ立体キルトにすることで、厚みを均一にすることで、保温性を高めようとしたものです。

当時は暖かい羽毛布団を生み出すことが主流でしたので、これ以外にも2枚の羽毛布団を合わせたり、3層仕立ての羽毛布団など、いろいろなバリエーションが生まれました。

二層式3×4-4×5キルトの問題点

当店も当時は安い羽毛布団は4×5キルト、高級な羽毛布団は二層式キルトというような区分で販売していました。実際二層式の羽毛側の縫製はかなり手間がかかる高価なものでした。

偏りがでやすい

実際に二層式キルトの羽毛布団を使うと、上面が3×4と一マスが大きいこともあり、特に襟元の羽毛が逃げやすいという問題がでました。それを防ぐために、中央部に多めに羽毛を入れるようなどの工夫をしましたが、根本的な解決にはなりませんでした。

キルティングパターンを見ていただくと判りますが、縦で4分割というと、かなり大きく、襟元の羽毛が下側へ偏りやすくなります。

羽毛を均等に入れてしまうと、襟元が偏る

下図は、二層式ツインキルトで標準的なマス目を均等に入れた場合です。充填効率=生産量を上げようとすると均等に入れた方が良い場合が多いのですが、この入れ方だと襟元が非常に薄くなってしまいます。上層は3×4マスでマスが大きいために片寄りやすいのです。これを防ぐためには羽毛の量を1,300gとか1,400gにして、増えた分を上層に増量しなければなりません。

中央部を増やしてみたが、根本的解決にはならない

こちらは眠りのプロショップSawada羽毛工房ダウンラボの標準入れ目です。同じ1,200gですが、上層の中央列を両サイドの1.4倍にすること+襟元の量を増やすことで、保温性を確保し、襟元の羽毛の片寄りが少なくなるようにしています。

しかし、このようにしても襟元の羽毛は逃げがちなので、一般的な二層キルトは避けた方がいいでしょう。

しかも、通気性が悪くなるので蒸れやすい

今でもほとんどの二層式羽毛布団の中間にはタフタと呼ばれる、ナイロンやポリエステルでできた軽量の生地を挟んでいます。ところが、このタフタは通気性があまり良くないものが多いため、保温力はあがるものの、通気性が低下して蒸れやすくなるという問題があります。

保温力だけを重視している時代はそれでもよかったのですが、快適な寝床内温湿度33℃50%を考えると、徒に保温力だけを上げることには問題があります。

表生地と裏生地の間の中間生地 ナイロンタフタは通気性が良くない

しかしながら、現在もなお二層式キルティングとの羽毛布団はほとんどがこのタイプです。

改良版CON二層キルト

これらの問題点を解決するために、現在当店ではCON二層キルトを採用しています。

偏りが少なく、バランスの良い3×5-4×6キルト

上面は3×5キルトにすることで偏りを減らしています。下面は変形の4×6キルトで、これは一番薄くなるキルトの交差点が反対側の中央にくるように、なっています。

中間の生地をメッシュにして、通気性を確保

中間に使う生地はタフタではなく、通気性の良いメッシュ生地にしています。(一部の側を除く)これにより、タフタ生地で通気性が悪くなるという欠点をなくしました。

メッシュの中生地なら、通気性は損なわれない

中央部を厚めにして、身体にフィットする羽毛量の入れ方

CON二層キルトは例えば1200g入の場合、それぞれのマスの羽毛充填量は下記のようになります。

上面の場合中央部は、両サイドより4割増しで羽毛を入れています。これによって、中央部の保温性を向上させると共に、身体へのフィット感を高めるようにしています。いろいろと試行錯誤を行いながら、現在の充填量を決定してきました。(ご希望で充填量の変更もできます)

二層式キルトが本当に必要なのかどうかをご確認ください

この30年で、日本の住宅環境は大きく変わりました。湿気をためない工夫を行った伝統的な和建築から、欧米のような高気密高断熱住宅へです。

すると和建築で冬室温が5℃ぐらいであったものが、新しい高気密高断熱住宅は冬でも15℃を切ることが少なくなりました。そうすると、保温第一に仕上げた二層式は暑すぎることになります。

変形5×5キルトなら、一般的な4×5キルトより暖かい

当店の普通厚羽毛布団のシングルサイズは、下図のように変形5×5キルトになっています。これは一般的に流通している4×5キルトに比べると、身体の中央部に縫い目が来ないので、保温性が向上します。保温性を上げる場合は、このような方法でも十分なケースが多いのです。

高気密高断熱性の住宅なら中厚で十分

私どものお客さまでも、太平洋側大都市部のマンションだと、普通厚でも暑すぎて、中厚ぐらいが適当という方が大半です。もちろん、暑がり・寒がりという人の体質によっても異なりますから、一概にいえませんが、今日では二層式キルトが必要なのは、基礎代謝量が低く、寒がりの方で、旧来からの和建築であったり、冬の室温が10℃以下になる方ぐらいです。

現在のお手持ちの羽毛ふとんが二層式キルトであった場合、リフォームなさる場合は、体質と住宅環境を考えて、仕上げの厚さをお決めください。わからない場合は、リフォームのカウンセリングを行っておりますので、メールでお問い合わせください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次