羽毛の量が800gのダウナ羽毛布団はマスの中で片寄りやすい
最近続けて持ち込まれたダウナ羽毛布団、ドイツで印字されたラベルから推定すると2013~2014年ぐらいの品ですが、羽毛の量が800gでした。ダウナの羽毛布団はシングルサイズで4×5キルトで11cmマチと、ふっくら仕上がる仕立てになっています。従来持ち込まれてきたのは、ほとんどが1,050g入りでした。
ダウナのオリジナルのキルティング 4×5 20マス 11cmマチ高
現在ダウナのWEBサイトを見ると、シングルサイズではレギュラーが960g、ミディアムが760g、肌掛けが400gとなっています。私どものオリジナル羽毛布団も普通厚は950g、中厚が800gなので、それに対応する形です。実際に見てみると薄く片寄っています。
この800g入りのダウナ羽毛布団がレギュラーなのか、ミディアムなのかは昔のモデルなので判りませんが、4×5キルトで11cmもマチがある側に入れるには量が不足しています。つまり、マスの中で片寄りが出やすいのです。
洗濯方法も不明です。水洗いもドライもダメで、クリーニング店へご相談くださいとありますが、実際問題どうするのでしょうか?クリーニング店も困ってしまいます。
このお客様の場合、何回か丸洗いをなさっていて、5年目ぐらいから羽毛の吹き出しが目立つようになってきた、とのことでした。実際お預りした時点で生地のあちこちからダウンファイバー(羽毛ゴミ)の吹き出しが確認できました。ヨーロッパ製の通気度の良い羽毛布団には良くある話なんですが、ダウナはダウンファイバーが多いようです。
4×5マス 11cmマチで800gはどうして片寄るのか?
計算をしてみました。中央部のマスで、マスの中央が膨らまない立方体としての理論値です。
4×5マス 11cmマチの場合 1マスあたり 17,325㎤ ÷ 1マス40g = 433㎤/1g
5×6マス 7cmマチの場合 1マスあたり 7,350㎤ ÷ 1マス27g = 272㎤/1g
つまり、1gあたりの空間量は5×6マス 7cmマチに比べると4×5マス 11cmマチは1.6倍あることになります。ダウンパワーが440㎤/1gだとすると、これではぎりぎりです。実際はマスの一部を押さえるとすぐに片寄ってしまいます。実際は中央部が膨らみますので、余計に羽毛の量が足りません。
この数値から見ると4×5キルトで11cmマチであれば1100gは欲しいところです。1100gで315㎤/1gとなります。最低でも1000gでしょうね。いままでのダウナが1050gだったのも理由がつきます。
マス目内の偏りを防ぎ、適度な弾力性をキープすることを考えると、理論値×1.5倍ぐらいのダウンパワーが必要かと思われます。この件はもうちょっと突っ込んで整理してみました。
リフォームは5×6マスで仕上げるのがベスト
実際にお預りした800gの羽毛布団は片寄りがはっきりしていました。これでは同じ側生地でリフォームしてもまた同じ結果となります。
結論としては5×6マス 7cmマチの中厚仕上げで上げるのがベストでしょう。20マスから30マスに増え、マチ高もバランスの良い7cmなので、マスごとの片寄りがぐっと少なくなります。
大都市圏のマンションや高気密高断熱住宅であれば、この中厚5×6仕上げの方がいいでしょう。一方保温性が低い住宅や寒冷地であれば、足し羽毛を200g足して、変形5×5キルトの普通厚で仕上げることをおすすめいたします。
800gにおすすめ 5×6 30マス 7cmマチ高のキルティング
5×6 30マスで7cmマチなら、800gという羽毛の量に合わせた仕上げになります。
実際にリフォームをしてみると
中の羽毛は正直ダウン率95%を謳うには、ちょっと厳しいですね。私の評価(目視での)は93%ぐらいです。
以前から気になっていたのですが、ダウナは私どもの95%のダウンに比べるとダウンファイバーが多いのです。このようにダウンファイバーがけっこう生地に残っています。その為、何年か使用して生地が甘くなってきたり、丸洗いすると吹き出しが目立つようになります。
5×6マス 850gでリフォームを仕上げ
お客様は吹き出しも気になさっておられましたので、通気度3.2ccの当店オリジナル100番手平織生地S9100(ダウナと同じ85g/㎡)を使い、5×6マスで、マス目間の羽毛の移動が起こらない完全立体キルトオプションで仕上げさせていただきました。
充填量は当初の800gでも悪くはないのですが、10年近く使われていますと羽毛の劣化も出てきます。洗浄・除塵で150gぐらい減りました。私どものリフォームでは当初に入っていた羽毛量から5%ぐらい多めに入れるようにしていますので、430ダウンパワーのポーランドホワイトグースダウンを200g足して、今回は850gにて仕上げています。ふっくらと戻っています。
今回の例は、ほぼ同じ重量の生地同士なので、元々の充てん量より多めに入れましたが、一方、60番手サテン(136g/㎡)の羽毛を80番手平織(94g/㎡)にリフォームする場合は、生地が軽くなった分良く膨らんで必要な羽毛量が減ります。この場合は、充填重量は同じか、本当に良い羽毛だと少なめに充填することもあります。いずれにせよ、洗浄・除塵後の羽毛の状態をみて判断しています。
5×6マスのリフォームプランを選ぶには
ダウナ用には より軽量で上質なドイツ製生地TE200を使ったプラン と 吹き出しがしにくい、ダウナのオリジナルとほぼ同じ重量の 国産SB100生地を使ったプランの2種類を用意しています。